【「ハドソン川の奇跡」のあらすじ、ネタバレ感想、評価など】
さて今回ネタバレ批評いたしますのは、クリント・イーストウッド監督の最新作『ハドソン川の奇跡』です。
イーストウッドも御年86歳。年齢的に見て、勝手に前作の『アメリカンスナイパー』が最後の作品になるかも、、、なんて思っていたのですが、なんてことはありません。巨匠はまだまだ健在でした。
そんな彼がトム・ハンクスを主演に迎え挑んだ意欲作。どんな映画に仕上がっていたのか、早速書いていきます!
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「ハドソン川の奇跡」あらすじ、キャスト、監督について
まずはハドソン川の奇跡のあらすじを簡単にまとめます。
「ハドソン川の奇跡」の監督、キャスト
先ほども書いたとおりですが、主人公のサリー役を演じるのはトム・ハンクス、監督はクリント・イーストウッド。
キャスト
トム・ハンクス(機長のサリー役)
ローラ・リニー(副機長のジェフ)
アーロン・エッカート(サリーの妻ローリー役)
監督
クリント・イーストウッド
ハドソン川の奇跡の簡単なあらすじ
事件が起こったのは2009年1月15日でした。
極寒のニューヨーク上空850mで155名を乗せた航空機を突然襲った襲った全エンジン停止事故。鳥の群れがエンジンに突っ込む、バード・ストライクが原因でした。
大都市に墜落すればどれだけの被害が出るか分からない。
近くの空港に着陸するよう管制室から指示がある中、機長サリー(トム・ハンクス)は不可と判断し、ハドソン川への不時着を決断。事故発生からわずか208秒。
それは経験豊かな機長サリーの英断でした。
その偉業は「ハドソン川の奇跡」と呼ばれ、サリーは一躍英雄として賞賛される。
しかし、その一方で不時着以外の選択肢はなかったのか?それは乗客たちを命の危険に晒す無謀な判断ではなかったのか?酒を飲んでいたのではないのか?麻薬の経験は?
事故調査委員会による度重なる追求をサリーを追い詰めます。
「救ったのに、なぜ?」
極限状態までに追い詰められた彼を支えてくれるのは、数少ない仲間と心から愛する家族でした。
そして、最後に事故調査の結果が出ます、、、。
ハドソン川の奇跡の感想、評価(ネタバレ注意)
では、実際に映画を見た感想、評価などをまとめます。なるべく結末はぼやかしますが多少なりともネタバレ要素があるので御了承ください。
実話とエンターテイメントの融合
正直、この映画を見るかどうかちょっと迷っていました。テーマとしてもなかなかに重い実話のストーリー。特にアメリカンスナイパーの重苦しい最期が記憶に残っていたので、気軽に行っては疲れるだけだなとも思いましたし。
しかしながらイーストウッドは、こんな重いテーマであっても『魅せる』ことを徹底していたように思います。そしてその魅せ方がねー、、、渋い(笑)
USエアウェイズ1549便不時着水事故は、奇跡の生還から一転してパイロットが行った対処への疑問に世論が移ろっていきます。騒ぎ立てるマスメディアと、それに翻弄される機長。はっきり言うと、この題材では絶対もっとウェットな演出になるのだろうなぁと思っていました。
感動の押し売り、と言っては言葉が悪いですが、明らかに泣かせようとするテーマであって、あまりその手のものが得意でない私はそれでもって嫌遠してた部分もあり、、、なのにイーストウッドが選んだ演出は『静』でした。
ものっすごく淡々としてるんです。ただ日々が過ぎて行く感じ。主人公が追い詰められる状況下にあっても、それを悲劇的に演出するのではなく単なる事実としてそこにある。だからこそ、辛い。
主人公を一辺倒に描くのではなく、世論すらも賛否両論。どちらが善とかどちらが悪とかじゃないんです。どちらの意見も解って、どちらとも答えが出せなくて、、、ずっと気持ちが揺れながら見ていました。
アメリカンスナイパーはどちらかと言えば主人公がただただトラジックであり、その辺もあってどうにも救われない感覚がありましたが、今作は最後のカタルシスは何とも言えないものがありました。
まぁ、実際の話が基となっているので、現実に救いがあった後者の方がすっきりする終わりになるのも当たり前なのですが、それでも非常にうまく現実との折り合いをつけたなぁと感動しました!
あと、イーストウッド作品にしては比較的短め(96分)だったのも、見やすい要因だったかもしれません(笑)
時系列の入れ替えによる解りやすい物語の整理
今作は意図的に時系列を入れ替えています。
時系列の入れ替えは自分の中で賛否があって、結末が解ってしまうとご都合的にそこへ収束させているように思えるんですよね。でもこの作品は実話ベースですから、だいたいの人は結末を知っている。だからこそこの入れ替えが効果的だったのではないかと思います。
最初に起こってしまった事故を描き、観客とともに事故の真相を解き明かしていく、、、まるでサスペンス映画のような緊張感!マスコミの論調から小出しにされる情報と、徐々に明らかになっていく全貌が非常に胸にきました。
また主人公の回想で出てくる過去の話は、より一層感情移入する要因になってきます。そうじゃなかった、仕方なかった、出来る限りやったんだと、そんな思いから呼び戻される記憶に心が揺さぶられ、しかし出てくる調査結果に記憶が否定される。
観客はある意味で事故調査委員会のメンバーなんですよね。調査結果と証言と、同時に聞いて。明かされていく事実に、どういった結論を出すのかを託される。最後までスリリングで、本当に飽きさせない作りが徹底されていました。
しかし今回に限って言えば結論はすでに出ているので致し方ないですが、イーストウッドはもしかしたら結論をこちらに投げて終わりたかったかもしれないなとも思いました。丁度前作がそんな感じだったので、実話でなければそうしてたかも?
最後に
こういう映画は、非常に偏ったものになりがちです。
けれどハドソン川の奇跡は非常にニュートラルであり、見終わった後がとても気持ちのいい映画に仕上がっていました。疑念や絶望、悲しみや怒り、、、しかし最後に残ったのは希望だった。
そして今作はもう一つの側面を持っています。アメリカが経験した悲劇、マンハッタンと旅客機と言うキーワードで『それ』を思い出す人も少なくありません。そう、この作品は9.11への回答でもあると言われているのです。
悲劇を、『エンターテイメント』に昇華する。これが出来るからアメリカは強いのかなぁとも時々思います。まだやれる、きっと大丈夫って思える。『希望』の映画、、、
そういえばごく最近そんな気分にさせてくれる映画が、日本でも作られましたね。
『シン・ゴジラ』と『ハドソン川の奇跡』。アプローチもジャンルも全然違いますが、向き合ったもの、描きたかったものがとても似通っているように思います。
この2つの作品が同じ年に公開されたことに、ある種の運命的なものも感じました。
人の強さや希望が見たい人、特に『シン・ゴジラ』を見た人(笑)、ぜひ一度劇場に足を運んでみてはいかがでしょうか。